念のため、タイトルを変えました。前回、コメントを付けて下さった方々、重ねて、お詫び申し上げます。
「人種のるつぼ」と言われるアメリカだが、実際のところ「人種」の壁は、かなり厚い。日本人として、日本で大学までの期間を過ごし、その後渡米した私にとって、初めてぶつかった壁が「人種」であった。言語や文化の違いは、学ぶことによって、いくらでも克服出来る。しかし、「人種」というのは、自分で選べるどころか、ましてや努力次第で変えられるようなものではない。ちょっとした差別を受けただけで、戸惑い、怒り、悲しみが交差し、複雑な思いが自分の中を占めた。 「人種差別」とは、全く理不尽なものであると、つくづく思う。自分の知らないものに対して、即座に拒絶反応を示す人、差別することでしか優越感を得られない人が、数多く存在することに、驚きを隠せない。「人種差別」には、「教育」が一番必要だと言われているが、「教育」さえ行えば、解決出来るような簡単な問題ではないことも事実だ。 アメリカにおける「アジア系」に対すると差別と「アフリカ系」に対する差別では、全く比較にならないと聞く。アフリカ系のアメリカ人が成功するには、並々ならぬ努力と、忍耐、寛容性が求められる。十年以上前に、夫が仕事を通じて知り合い、以来家族ぐるみの付き合いをしている、アフリカ系アメリカ人の家族がいる。ベンチャーキャピタリストの夫と弁護士の妻。2人の子供は、共にアイビーリーグの大学を出ている。もちろん、ここまで来るのに、順風満帆であった訳ではない。それなりの差別に遭いながら、苦労してきたはずである。また、成功を収めたことで、同じアフリカ系から、逆差別を受けることすらあったであろう。でも、この2人はその微塵すら見せない。社会的な成功を収めているにもかかわらず、謙虚で、物腰が柔らかく、高飛車なところは全くない。彼らに学ぶことは非常に多い。私が最も尊敬する人達の中に含まれる2人である。 ある時、2人と「人種差別」の話をする機会があった。当時、全寮制の名門高校に通っていた娘が、一部の生徒から「人種差別」を受けていると電話してきたそうだ。その時に、娘に伝えた言葉が、「It's not you. It's them.」人種差別は、異人種であるあなたの問題ではなくて、異人種を理解しない彼らの問題だ、という訳である。以来、この言葉は、私の胸に深く刻まれている。 理不尽なこととはいえ、相手が問題を理解していなければ、元も子もない。いくらこちらから説明しても、簡単に理解を得るのは難しいだろう。他民族を理解する「教育」はもちろん大切ではあるが、それに加え、何かが必要である。一体それは、何なのであろう。 ところで、その2人の友人の一人が、「次回の大統領選に立候補する」という話を3〜4年前に聞いた。同じく、アフリカ系のアメリカ人で、とても有能な人だと言う。インタビューや討論会を見るたび、「類は友を呼ぶ」ではないが、夫の友人と姿が重なる。実際に彼に会う機会は、私にはなかったのだが、2人の友人というだけで、彼が一体どんな人間なのか分かるような気がした。 その彼は、明日、アメリカの大統領に就任する。差別を乗り越え、成功した人間は強い。その強さは、柔らかい強さである。アメリカの「人種」の壁は、厚いけれど、乗り越えられないものではないことを証明した彼。もしかして、彼には、この難しい人種問題を解決する糸口を見つけられるのかもしれない。選挙のスローガン同様、何かが変わっていくような感覚を、国民が感じている。「乗り越えられない壁はない」彼が証明してみせたことは、多くの国民に、大きな力と勇気を与えた。アメリカの人種差別は、今、大きな転機を迎えている。
by satchi_nakajima
| 2009-01-22 02:59
| ひとりごと
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